愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
「殿下、セレアを泣かさないで下さいよ」
アレンが私に近づき、ハンカチでそっと涙を拭いた。
「アレン、君には関係ないことだ」
「セレアも馬鹿ですけど、殿下も大概《たいがい》ですね」
「どういう意味だ・・・?」
「どんな理由であれ、好きな女性を泣かせるなんて紳士として駄目ですよ?」
アレンが私の顔を覗き込む。
「セレア、君がそんなに辛いなら、俺がセレアを貰ってあげようか?」
「アレン、何を言っている・・・!セレアは俺と婚約している!」
「俺ならセレアを泣かせませんよ」
アレンの意図は分からないけど、アレンを止めないと。
なのに、涙が止まらなくてうまく話せない。