雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
寝室を飛び出した先の廊下も暗いままで。得体のしれない不安が加速度的に増していく。
廊下から、リビングダイニングへと勢いよくドアを開けても、そこにも灯りがついていなくて誰かがいる気配はない。開け放たれたままのカーテン。窓から差し込む月の灯りだけが部屋を照らし出していた。
「雪野? どこにいる?」
我を忘れたように、家の中すべてのドアを開けて歩く。
「雪野っ!」
その姿を確認したくて、必死で呼んでも何の返事もなくて。バスルームにもキッチンにも、雪野はいなかった。
雪野は――。
誰もいない暗い部屋で、呆然と立ち尽くす。
出て行った――?
すぐに過ぎった考えを打ち消したくて、もう一度リビングダイニングへと戻る。
ちょっと出掛けただけ。それなら書き置きがあるはずだ。でも、そんなものはどこにもなくて。
まるで、ただ忽然と雪野だけがいなくなったみたいで。ひったくるようにスマホを手にして、雪野に電話をしても無機質な呼び出し音が鳴り続けるだけだった。
『創介さん、どうしたの?』
いつものように俺に振り返る雪野の笑顔が一瞬浮かんだ気がしても、それはすぐに消えた。
雪野と二人で過ごした時間で満たされているはずの部屋が、急によそよそしいものになる。
「…….雪野? どこだ?」
俺は雪野を失うのか――?
そんな訳がない。そんなこと、許さない。発狂しそうになって、部屋を飛び出した。