雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「今日のパーティーには、各界の著名人や肩書ばかり立派な連中が集まる。そんな面倒な場に、わざわざおまえを出席させて疲れさせたくないと思っていた」

創介さんが私をじっと見つめる。

ユリさんとばったり会った時、言っていた。
このパーティーは夫婦同伴だと。でも、創介さんは私に出席するように言わなかった。

それは、私のためだったのだ。
余計な気苦労をさせないため。

「それより何より、栗林や竹中夫妻も出席する。奴らと対峙するには、もう少し時間を置いた方がいいかもしれないと考えて。今の今まで悩んだ」
「創介さん……」
「でも、そんなことを悩むなんて、俺が間違っていた」

創介さんの真摯な目が、私の胸を捕らえる。

「やっぱり、どう考えても、おまえを隠して遠ざけることが守ることにはならないよな」

見上げた先にある険しい顔が、ふっと緩んだ。

「――すぐに出かけるぞ」

そう言うと、そのまま私の腕を引いて行こうとした。

「ちょ、ちょっと待って! 私、何の準備も出来ていません。こんな格好じゃ――」

慌てて創介さんを引き留めた。窓掃除をしていた私は、着古したボタンダウンのシャツにジーンズという格好で。タキシードを着た創介さんの隣に立つと、余計に不釣合いな姿が際立つ。

「これから着替えればいいだろう」
「え? どういうこと?」

慌てふためく私に構わずに創介さんに腕を引かれて、気付けばタクシーに乗せられていた。

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