雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
* * *
年末年始は慌ただしく過ぎて行き、あっという間に一月下旬を迎えた。
私のことを考えてくれる創介さんに、私も思いを返したい。
創介さんと結婚してから、ずっと考えてきたことの結論を出した。その決意に、もう迷いはない。それが、私が一番望むことだ。
榊家で、丸菱の幹部の方たちをおもてなしする日。この日のために、創介さんは親身になって一緒に考え、準備してくれた。
「雪野の行動や思いには嘘がない。嘘のないことは、必ずいつか伝わる。俺はそう思ってる」
創介さんが私にそう言ってくれた。
午前中に榊家に到着すると、真っ先にお父様の書斎へと向かった。
「今日は一日、お世話になります」
お父様は、書斎のデスクで何か仕事をされていた。
「ああ。後で、少しは顔を出す」
「すみません、よろしくお願いします」
こちらをちらりと見て、またすぐに書類に目を戻していた。
「あの、お母様は……」
お母様にも一言声を掛けておきたかった。私がそうたずねると、手にしていたペンを置いて私を見上げた。
「今日は出掛けている」
「そう、ですか……。わかりました」
もしかして、ここに居づらくてわざわざ出かけたのだろうか――。
そう思えて、心苦しくなる。
追い出すことになってしまったのだろうか――。
「雪野」
「は、はい」
創介さんの声に、慌てて視線を創介さんに向けた。
「行こうか。そろそろ準備に取り掛からないと」
「はい。では、お父様、失礼いたします」
心に何か鉛のようなものが落ちる。でも、そうまでしてこの日を与えてもらえたのだから、精一杯頑張らなければと自分に言い聞かせた。