雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
開始は昼食に合わせている。
着席ではなく、立食にすることで、たくさんの人と話ができるようにと考えた。
リビングに並べられた料理は、美味しいと評判のお店を創介さんや神原さんと相談して手配した。そして、ありがたいことに、創介さんの叔母様も差し入れをしてくださったのだ。
この場には、いろんな人の思いが込められている。
私の気持ちも込めたくて、私自身で準備したものがある。選べるように、いくつかお菓子を手作りした。
「――本日は、私たちの呼びかけにお応えくださり、誠にありがとうございます」
出席者が全員集まると、創介さんがまず挨拶をした。
「このたび、榊家に雪野を迎え入れたわけですが、改めて紹介させていただこうと、このような場を設けさせていただきました。
これから、共に丸菱を支える一員として、そしてこの丸菱を支えて来てくださった皆様の後輩として、ご指導いただければと思います」
そう言い終えると、創介さんが私に視線を向けた。創介さんに促されて、創介さんの一歩前に立つ。
「お忙しいところお越しいただいて、本当にありがとうございます。
私は、何の経験も知識もなく結婚致しました。結婚してから、自分の無力さに向き合う毎日です。
ですが、丸菱で働く夫を支え力を尽くしたいと思う気持ちは皆様と同じです。
精一杯努力して行きたいと思っておりますので、至らぬ点や、お気づきの点はどうか、何でもおっしゃっていただければと思います。
そのすべてが私に教えとなり糧になります。よろしくお願い致します」
どんな言葉も、厳しい言葉も、きっと私を成長させてくれる。
「本日は、ぜひ、おくつろぎください」
頭を下げて再び正面に向き直ると、どこか私を見守るような皆さんの表情に涙腺が刺激された。