雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「今日は、お疲れ様でした。本当にありがとうございます」
お客様皆さんをお見送りした後、誰もいなくなったリビングで創介さんに改めてお礼をする。
「なんとか成功したな。お父さんも出て来てくれたことだし。これで、おまえが榊家の人間として認められていると印象付けることが出来ただろう」
「本当に感謝してます。創介さん、ありがとう」
「おまえも頑張ったからだ。これからもよろしく頼むよ。奥さん」
冗談ぽく創介さんが言うから、私は笑って「はい」と答えた。
「創介さん、私、改めてお父様にお礼してきます」
「ああ。じゃあ、俺はここで片づけを始めておくよ」
二階の書斎へと向かう。
ドアを二度ほどノックし「雪野です」と告げると、「どうぞ」と返事が返って来た。無意識のうちに深呼吸をして、部屋へと足を踏み入れる。
「先ほど、皆様お帰りになられました」
「そうか」
お父様が、視線をデスクの上のノートパソコンから私の方へと向ける。
「今日は、この場と時間をお貸しくださってありがとうございまいた。おかげで、皆様とゆっくりお話することが出来ました」
こうして二人きりでいると、それだけで何とも言えない緊張に襲われる。それに負けずに、しっかりと感謝の気持ちをを伝えたかった。
「雪野さん――」
私を呼ぶ声に頭を上げる。その時には、お父様は席を立ち窓辺に佇んでいた。既に暗くなっていた窓の向こうを見ている。
「はい」
「都のことは許してやってほしい……」
「……え?」
お母様のこと――?
突然のお父様の言葉に戸惑う。