雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「あれは、君の義母だ。本当なら一番に指導してやるのが筋だが、君には何もしてやっていない。ただでさえ慣れないところを、一人で闘わせているようなものだからな」
「い、いえ。それにはそれの事情が――」
お父様が、私に何か用件以外のことで言葉を掛けて来たのは初めてのことで、戸惑いと共に驚きで一杯になる。
「そうだな。普通の嫁姑とは違う。だが、それだけじゃない」
そのぴんとした身体をゆっくりと私の方に向けた。
「君も聞いているかもしれないが、雪野さんにはどことなく創介の本当の母親の面影がある。それはつまり、都にとっての君は、私の前妻に似ている存在だということになる」
それはつまり、私が、亡くなられたお母様を思い出させる存在だということ――。
「だから、君を見ると複雑な気持ちになるんだろう。創介が君を選んだことが、まるで自分を責めているようにも感じているかもしれない」
創介さんがいつまでも今のお母様を許していないと、そう感じ取っているということだろうか。
「創介の本当の母親が亡くなって、すぐに再婚したのは事実だ。創介と都の間には憎しみと罪悪感の歴史がある。それは君も知っているだろう? 結局それはすべて私の罪だ」
どうして気付かずにいたんだろう。
考えればすぐにわかることなのに、思いが及ばずにいたなんて。
確かに以前、創介さんと付き合い始めた頃、創介さんが言っていた。
――目元が、どことなく母親に似ている。
私のこの存在自体が、お母様の心を抉っているのか――。
「都との距離が縮まらないことを気に病む必要はない。君に責任があることではないからな。ただ、仕方がないものと思っておいてくれ」
お父様の言葉に、簡単に頷けない自分がいた。