雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
それじゃあ、このままでいるのがいいのか――。
私がお母様に会わないようにすれば、お母様の心は本当に晴れるのか。
何年も何十年も、罪の意識と苦しさに囚われたままでいる。その苦しさの重みを感じると同時に、また違う思いも込み上げる。
創介さんの気持ちは?
創介さんの、亡くなった本当のお母様の気持ちは――?
愛しい子供を残して死ななければならなかった。そのうえ、夫は違う誰かを愛していた――。
自分の身に置き換え少し想像しただけで、胸が引き裂かれる思いがする。
答えが出ない。
でも、出なくて当然なのだ。私は、ただ想像することしか出来ない部外者で。そんな私が、当事者である創介さんやお母様、そして亡くなられたお母様の意思を踏みにじることはできない。
でも――。
「――分かりました。でも、いつか。いつか変わる日が来ることを、勝手に待っていてもいいですか?」
そうお父様に言っていた。
「……そうだな。いつか、死ぬまでに、絡まったものがお互いに納得できる形で解ける日が来ればそれは幸運なことだ」
その視線は、再び闇に戻される。
お父様の声に潜む寂しさは、それは願いであって、決して叶うことはないと言っているようだった。