雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「――はい。命がどうとか、そういうことじゃないです。大丈夫です」
その言葉を聞いた瞬間、身体中に張り詰めていた緊張感が一気に弾けて、その場にしゃがみ込んでしまった。
「お、お義兄さんっ! 大丈夫ですか?」
「ああ、すまない。ちょっと、腰が抜けた」
俺を引き上げるように優太君が肩を貸してくれた。
「ありがとう。君も、驚いて大変だっただろ」
「い、いえ」
ベッド脇に立ち、雪野に身体を近付ける。その顔を、間近で見たかった。ちゃんとここにいると実感したかった。
「疲れたのか? また、最近無理させていたのかな……」
寝ている雪野に小さく声を掛け、起こさないようにそっと頬に手のひらを添わせる。毎日顔を見ているはずなのに、そこにいる雪野は全然違う人に見えた。眠るその姿は、あまりに静かで儚さを感じてしまう。
「――あの」
「ん?」
俺の後ろに立っていた優太君が、躊躇いがちな声を俺に掛けて来た。
「俺、お義兄さんが来たこと看護師に伝えて来ます」
「ありがとう。よろしく頼む」
そう答えるともう一度雪野に向き直った。まだ心臓が激しく鼓動している。どれだけ恐怖を感じたか、再び蘇る。
本当に良かった。俺の、ただの想像で本当に良かった――。
掛け布団の上に置かれた雪野の細い腕に触れる。
もう、俺に、こんな心配させないでくれよ。本当に心臓に悪い――。