雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


 その後、医者に呼ばれて雪野の状態について告げられた。

「――それは、つまり……」

「はい。奥様は、妊娠されていますね」

妊娠――。

その言葉を聞いても、自分がどんな感情になっているのか掴みかねていた。

 それより、俺の中では雪野の身体が気になっていた。恐怖の余韻が残る俺には、そればかりが頭を埋め尽くしていた。

「今回倒れたのは、妊娠が原因なんですか?」
「おそらく、そうでしょう。日常生活の中であまり症状が出ていなかったのが、妊娠の負担により少し出てしまったんでしょう」

肯定する医者の言葉、ただそれが俺の頭を駆け巡っていた。

「奥様は、もともと貧血気味のようですね」

雪野が貧血気味だなんて、初めて知った。雪野からそんな話を聞いたことはない。

「貧血というのは――」

医者が詳しく説明してくれていたのは分かっている。でも、耳に届くだけですり抜けていく。俺の心の中にただ深く深く沁みこんだのは、”倒れたのは、貧血持ちの身体で妊娠したから”その言葉だけだった。

俺は、雪野を失いたくない。絶対にだ。


 
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