雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
玄関先だったことを思い出し、早々に寝る支度を終え寝室に向かった。
雪野を腕に抱きながら、ベッドに横たわる。間接照明だけのオレンジ色のあかりが俺たちを優しく包んだ。腕に感じる雪野の頭の重み。それを実感しながら、雪野の髪をそっと撫でる。
「――俺の言い訳を、聞いてもらえるか?」
雪野の母親の言葉を頭の中で反芻する。
――夫婦なんだから、言い訳したっていいのよ。
格好悪くても無様でも。きっと、ありのままの気持ちを話すことが、お互いにとって大事なことなんだと言いたかったんですよね――?
心の中で、雪野の母親に問い掛ける。そうしたら、あの笑顔が浮かんだ。
「言い訳?」
雪野が不思議そうに俺を見上げる。
「そう。俺がおまえを傷付けてしまった言い訳だ」
その雪野の目を見つめて、一つ一つ、言葉を吐き出して行く。
「雪野が倒れたと聞いた時、どうしようもないほどの恐怖を感じた。その時、一瞬にして、俺の母親が死んだ時の光景が蘇ったからだ」
「……創介さんの、お母様?」
「ああ。俺の目の前で息を引き取った、大事な人を失くした瞬間だ」
思わず雪野の肩を俺の方へと引き寄せた。
「あの時のような思いはしたくない。いや、今おまえを失えば、あの時以上の喪失感を味わうことになる。それが怖くて仕方がなかった」
「失うって……、私は、ただの貧血で――」
「でも、俺にはそう思えなかった。俺の母親はもともと体調があまりよくない状態で無理をして俺を産んだから、その後より体調を崩すようになった。結局、そのまま大きな病気をして。それを聞いたから、余計に不安でたまらなくなったんだよ」
雪野に触れていると、いろんな感情がないまぜになって込み上げて来る。