雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「創介さんの想いはきっと届く」
雪野が俺の頬を両手で包み込み、真っ直ぐに見上げて来た。その目には涙があふれていた。
「二人で、ずっと覚えていよう? 確かに私たちのところに来てくれた命だから。ずっと――っ」
雪野の表情が哀しく歪む。その溢れ出す涙を指ですくった。
「二人で、覚えていよう」
そう言うと、雪野が涙で表情をくしゃくしゃにした。そんな雪野を胸に引き寄せ、抱きしめる。
それからしばらく、その肩は震え続けていた。その震えが止まるまで、ただじっと抱きしめ続けた。
少し落ち着いたのか、雪野が静かに口を開いた。
「……私は、やっぱり、創介さんとの子どもが欲しいって思うんです。私たちの間に、どんな子が生まれて来てくれるのか会ってみたい。それに、創介さんと一緒に親になりたい」
雪野の身体に少し、力が入ったのに気付く。そう言うのに緊張しているのかもしれない。
「私は私だよ。創介さんのお母さんとは違う人間。だから同じじゃないです。創介さんの傍にいるのは、私だから――」
腕の中から顔を上げ俺の腕を雪野が掴む。
「私は、ここでちゃんと生きてる。これからも生きて行くよ。創介さんのそばで」
雪野が掴んだ俺の腕を引き寄せて頬を寄せた。
「……そう、だな。雪野は、ちゃんとここにいる」
人の命なんて、どこで終わるかなんて誰にも分からない。でも、雪野がそう言うと何の根拠もないのに信じたいと思える。