雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「俺も……雪野となら、家族を作りたい。俺にも、出来るかな」
小さな頃から、決して温かいと言われる家庭に育って来たわけではない。だからか、そういうものを想像することは、容易なことではなかった。でも、雪野となら作れると、作りたいと思える。
「うん。大丈夫。二人で少しずつ成長して行けばいいんだよね?」
「そうだったな。俺が、おまえにそう言ったんだ」
俺が苦笑すると、雪野が笑った。雪野の頬に触れていた手のひらに、そのまま力を込める。
「――またいつか、俺たちのところにやって来てくれるように。俺も、もっと強くならないとな」
「うん」
雪野の目を真っ直ぐに見つめる。雪野が俺の目を見つめ返してくれる。
「二人で、タイに行こうか」
「タイ、ですか……?」
不思議そうな目をした。
「俺たちの元に来てくれた子が、確かにいた証。いなくなってしまったけど、でも確かに存在したんだ。俺たちの家族に違いない。だから、ゾウを一頭増やさないと」
「創介さん……!」
雪野が目を見開いて、そしてすぐにその目を弓なりにして嬉しそうな顔をした。
「そうですね。二頭の傍に、並べよう」
こんなことで雪野の気が晴れるかは分からない。でも、俺もそうしたいと思った。
「……創介さん、ありがとう」
一度引いた涙が、また雪野の目に溢れて来る。
今日は――。
雪野と二人で、失くした命を想って涙を流そう。