雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
雪野が好んで着ているシンプルな服の奥に、愛おしくてたまらない身体を隠している。
俺の前だけで、それをさらけ出して……。
「でも、新郎さんは、創介さんの方が素敵だったかな……なんて」
花嫁に目を奪われていたはずの雪野が、俺の方を見てそんなことを言った。
自分からそんなことを言ったくせに、恥ずかしくなったのか、語尾は小さく消えてしまいそうで。それでいて、俯いた表情はドキッとするほど大人の女のものだ。
「――おまえって奴は……」
ただでさえ、不埒なことを考えていたところに、俺を煽るようなことを――。
「もう、食べ終わったな?」
「え? は、はい」
「じゃあ、もう帰るぞ」
「急にどうしたの?」
俺の思考回路など知る由もない雪野の腕を掴み、カフェを出た。好都合なことに歩いてすぐのところに、二人だけになれる場所がある。
「創介さん、何か、急用でも思い出したんですか?」
俺の後ろ手に引かれている雪野から声が上がる。
「そうだ。急用だ」
今日はゆっくり休ませてやろうと抑えていたのに――。
休日の表参道の人波を掻き分けて、追い立てられるように歩く。
一刻も早く、可愛がりたい。
俺にしか見せない顔を、引きずり出したい。