雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
そして、日付が変わった頃――。
「元気な、女の子の赤ちゃんですよ」
産まれた瞬間の雪野の目には、涙が浮かんで。今の今まで苦しんでいたはずなのに、そんなことまるでなかったかのように、溢れんばかりの笑みを浮かべていた。
「――かわいい」
横たわる雪野の隣に移されたその赤ん坊のおそろしく小さな指に触れる雪野の仕草に、何とも言えない感情が込み上げる。
「雪野、よく頑張ったな」
汗ばんだ雪野の前髪をかき上げ、上気させた頬に触れた。
何故か、何度瞬きしても目の前の雪野の顔が滲んで見えて。でも、そんなことどうでもいいくらいに、胸が一杯になった。
「――創介さん、泣いてる、の?」
泣いてる――?
雪野の言われて目を擦る。
「あ、ああ、本当だ」
「ふふ。嬉しくて、パパが泣いてますよ」
可愛らしい鳴き声を上げる赤ん坊に、雪野が語りかける。
「パパ――」
「パパ、ですよ?」
その響きがじわじわと俺に実感させる。
「創介さんの娘だもの」
「鼻筋なんて、創介さんそっくりじゃない?」
駆け付けてくれていた雪野の母親がにっこりと笑う。
「そう、ですか?」
「確かに。お義兄さんに似てるな。でも、目元は姉ちゃんに似てるかも……」
優太君も、もともと人懐こい顔をくしゃくしゃにして微笑んでいる。
不思議なもので、”似ている”と言われると、くすぐったいような嬉しいような気持ちになるもので。
目の前の赤ん坊を見ていたら、どうしても顔が緩んでしまう。