雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「――パパさんも、抱かれてはいかがですか?」
「え……っ。いいんですか?」
助産師の言葉に一瞬にして緊張する。
「創介さんも、抱いてあげて」
雪野がそう言うと、皆が一斉に俺を見た。
「じゃ、じゃあ……」
タオルに包まれた赤ん坊を、おそるおそる受け取る。
「小さくて、柔らかくて、壊してしまいそうだ……」
肩が上がり、身体は硬くなり、びくびくとこの腕に抱く。
小さな身体で一生懸命に呼吸をして、声をあげる。その姿を見ていると、何をしても守りたいと、強い気持ちが湧き上り、そして、たまらないほどの愛おしさが生まれた。雪野と俺の子どもだ。
それから連絡すると、すぐに、俺の父親が病院へと駆け付けて来た。まだ日も登らない早朝だというのに、向こうから廊下を走って来る父を見て、思わず吹き出してしまいそうになった。
そう言えば、物心ついたときから、父親が必死に走る姿なんて見たことはなかったのではないか――。
そんなことに気付く。
「廊下は走らないでください」
「す、すみませんっ」
あの父が。あの威圧感と冷たさの塊の父親が、慌てふためき怒られている。
そして――。その後ろから必死で父の後を追う継母の姿も見えた。
二人して、雪降る暗い空の中こうして駆け付けてきたのかと思うと、その感慨深さに胸が熱くなった。
「お父さん、そんなに慌てなくても大丈夫ですから」
つい数時間前の自分を棚に上げ、いつもとまるで違う父に苦笑する。
「ああ、創介。雪野さんは、大丈夫か?」
俺の姿を捕らえた父が、結局また駆け寄って来る。