雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「次ですが……奥様から何と言われるのが一番嬉しいですか?」
「何かって、何?」
――だよね。
「言葉です! 奥様から掛けられる言葉で、何が一番嬉しいと思われますか?」
まさか、届けられた質問、全部三井なんじゃないだろうな……?
いちいち付け足したり説明したり、自分の質問かのようだ。
「そ、そうだな、妻から掛けられる言葉は、どれも、だいたい嬉しい――って、俺は一体何を言ってるんだ」
常務が、仕事用の『私』ではなく、今『俺』と言った。
なんて、俺が気付いたということは、目の前にいるこの女は――。
はい、再びフリーズ。
「ホント、すみませんっ。では、次です」
おお! 次は、少し楽な質問だ。
「常務のお好きな色は、何色ですか。あわせて、奥様をイメージする色もお願いします」
常務が何度目か、ハンカチを出して額を拭いている。
一体どれだけ疲れさせているのだろう。
「色……。私は、黒と紺が好きです。妻をイメージする色は、白って感じかな」
「白……。それって、純白とか、純粋とか、混じりけがないとか、まっさらとか、そういうイメージを奥様にお持ちということですよね? どれだけ素敵な奥様なんでしょう!」
手を握り合わせて、三井がまたも感動している。
それにしても、そういうこと即答できる常務って、本当に奥さんのこと大事に想っているのだろうな。
そんな、俺らしくもないことをつい思ってしまった。