雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「広岡君。いい社内報、出来そうだね!」
隣を歩く三井が満面の笑みで俺を見る。
「――誰かさんのおかげでな」
それを横目でちらりと見て、俺は前に視線を戻した。
「もう、最高。この写真も、これもこれも……。これ全部、アルバムにして私のコレクションにしよう!」
この日撮った写真を一枚一枚見ながらぶつぶつ言っている。
「一体、何枚撮ったんだよ」
「ん? 20枚くらい? あ――、これ、いいわ。ちょっと、女性誌に売り込もうかな」
「は?」
「私が毎月読んでいるファッション誌に、『私のイケてるボス』っていうコーナーがあるんだけど。それ、毎月一人、女性社員の推薦でいろんな企業の上司が取り上げられてるのよ。これまで見て来た誰よりも、絶対榊常務の方がカッコいい! 私、応募しちゃおうかな……」
三井が一人考え始めている。もう終わったかと思われた三井の暴走は、まだ終わっていないらしい。
「お、おい。そんなこと勝手にするなよ?」
「もちろんだよ。当然常務サイドの許可は取るよ? でも、丸菱テクノロジーの知名度も上がるし広告効果もある。悪くないと思うけど。よし。室長に企画書あげようっと!」
何を一人納得したのか、胸を張って歩き出した。
常務、お気の毒様です。そして、神原さん。申し訳ございません――。