雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


17:30――。

就業後、3階にあるリフレッシュルームで、営業二課の古舘(ふるたち)さん、広岡君、そして私の三人で作戦会議をしている。

「とりあえず、神原さんには”こんな企画があるんだけど”的な軽い感じでは言ってあるんです。でも、正式にお誘いするのは、営業二課か広報誌係の広岡君がするべきだと思うんですよ」

私が言う。

「まあ、そうだな。プロジェクト成功の打ち上げと広報誌大成功の打ち上げ、そういう名目だからね。じゃあ、うちか広報誌係か、どちらが行く?」

営業二課の古館さんは私たちより1歳上の先輩社員だ。プロジェクトチームにまさに参加していた人。古館さんは既に、プロジェクトメンバー全員から参加する旨の返事を取り付けている。

「神原さん、結構手強いからな……」

広岡君が、また後ろ向きなことを言う。

「神原さんにも来てもらうんだから、結構いけると思うよ?」

そんな広岡君を早いところ牽制しておく。

「そうだね。うちも、相当乗り気だよ。常務にはかなり恩があるからね。それに僕も、奥様に会ってみたいし」

古館さんがそう言った。

「ですよね?」
「うん。常務って、奥様の話をするときだけ、少し表情が緩むんだ。あの、鋭い雰囲気を発しまくっている榊常務が、奥様のためにとこーんな小さな象のぬいぐるみなんかを選んでるんだよ? あの姿を目にしてしまった時、僕は何とも言えないむず痒い気持ちになった」

古館さんが、手のひらで丸を作りながらそんなおいしい話をしてきた。

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