雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「――もういい。おまえに話した俺がバカだった。今度の土曜日、絶対に真実を確かめる」
どこの誰だか知らないが、土曜日時間を取ってほしいと雪野は電話で話をしていた。
この目で、この耳で、真実を確かめる。その事実がどうであろうと、俺の気持ちは一つだ。
それから土曜日まで、地獄のような気分で過ごしていた。
「――創介さん。私のために買ってくれた車、本当に乗り心地がいいの。ありがとう」
雪野は仕事を辞めてから教習所に通い、免許を取得した。
「あ、ああ。もっといい車を買ってやりたかったのに。本当にあんな小さな車で良かったのか?」
「小さくないです。普通の大きさですよ。初心者マークの私には十分です!」
雪野が選んだのは、国産のコンパクトカーだった。
「それならいい。せっかく免許も車も取得したのに、おまえの運転の練習に全然付き合えなくて悪いな」
「いいの、いいの!」
突然、雪野が大きく手を振った。
「そ、そうか……?」
そんな雪野を、ついじっと見つめてしまう。朝食時の、雪野との会話の一言一句すべてに過敏になる。
誰か、他の男を横に乗せているのでは――。
もう、限界だ。何から何まで怪しく感じてしまうなんて。
こんな状態いいはずない。
雪野が一言、何でもないと言ってくれれば、その言葉だけを信じる。
だから許してくれ。
今度の土曜日、おまえに問い質すことを、許してくれ――。
そうして、死にそうなほどの緊張にまみれた土曜日の朝がやって来た。