雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
『父もようやく雪野とのことを認めてくれた』
『父に宣言した条件、達成できたんだ。これで、何を言われることもない。正々堂々、おまえは俺の妻になれ』
二年待ってくれと言った創介さんが、嬉しそうに私に言ってくれた。
私は何の疑いもなく思い込んでいた。
創介さんが”二年待ってくれ”と言ったのは、自分の責任を果たすこと、そして、お父様と婚約していた相手方に誠意を見せるため。
その誠意というのは、二年という期間と、お父様と約束していたという社での創介さんの実績で。それを達成できたから、私との結婚を認めてくださった。
それで、済んでいたのだと思っていた。
俯いたまま額に手をやる。
私は、どれだけおめでたかったのだろう――。
半年前、四月付けで出向になったと知っても、役職が”常務”になったということも聞いていたから、それが飛ばされることになるなんて思いもしなくて。
あんなにもすべてをかけて頑張っていたのに、左遷されるように本社から出されたの――?
それが私との結婚が原因だと思うと、いてもたってもいられなくなる。
創介さんに、真相を確かめる――?
ううん。そんなことしても何の意味もない。
私に言わなかったのだから、それが創介さんの私への配慮だ。きっと、「関係ない」と笑うだろう。
それに、そんなこと創介さんに確かめたりしたら、「誰に聞いたのか」と問われる。
神原さんは、私に言ってしまったことを後悔していたようだった。
この状況から考えて、創介さんには神原さんから聞いたとは言わない方がいい。