雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


 その夜、夕食を食べながら、この日の話題を切り出してみた。

「そう言えば今日、お父様のお話ってなんだったんですか?」

常務室に掛かって来たお父様からの呼び出しの電話。その話題から、少しは何かうかがい知れるだろうか。

「ああ、年末年始の経済界のパーティーのことだ」
「年末年始、ですか……?」
「そうだ。年末も年始もやるんだから、まったく面倒だよ。それに、そのパーティーは大企業の幹部を対象にしたものなんだ。本来なら俺は出席しなくてもいいはずなんだけどな……。まあ、仕方がない」

その創介さんの言葉に、神原さんが言っていたことを思い出した。

――榊常務の場合、間違いなく本社の役員と同等のお立場になります。

創介さんは、今の会社のただの常務とは違うのだ。

 やはりお父様は、本当なら関連会社になど創介さんを飛ばしたくはなかった。
 創介さんの存在を、常に経済界の中で知らしめておくために、そのパーティーだって出席させるのだろう。

「……いつ頃本社に戻るのか、そういうことは決まっていたりするんですか?」

恐る恐る尋ねてみた。

創介さんとお父様の間で、どういう話がなされているのだろう。

これまで仕事のことを私の方から聞いたりしたことはない。

創介さんが一瞬不思議そうな顔をしたけれど、すぐに答えてくれた。

「はっきりとは知らない。特に”いつまで”なんて言われてないからな」

決まってない――?

それで創介さんは不安じゃないのだろうか。

早く、本社に戻って、本来の場所に戻りたいんじゃ……。

「どうした? そんな神妙な顔して」
「い、いえ」

創介さんが私の顔を覗き込む。慌てて笑顔を作った。

「俺としては、ずっと今の会社でもいいくらいだけどな」
「……え?」

思わず創介さんの顔を見つめる。

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