雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「……なんだって?」
自分自身に放った疑問と同じものが創介さんから漏れる。その声に困惑が滲んでいた。
自分の放った言葉に、自分で驚いている。
自分ですら理解できていない。言おうと思って出たものではない。勝手に、この口が動いていた。
今さら、何を言っているのだろう――。
勢いに任せて放った言葉が、虚しく宙ぶらりんになって漂っていた。時間を巻き戻すことも、引っ込めることもできない。
呆れてるよね――?
恥ずかしすぎて創介さんの顔を見られない。半ば自棄のように創介さんの首に強くしがみついた。
「あの、特に、意味は、ないですから――」
弁解になっているのか、恥ずかしさが帳消しになるのかは怪しいけれど、何かを言って誤魔化さなければと焦りばかりがつのる。
そんな私の背中に手のひらが添えられて、創介さんの肩が少し震えているのに気付く。
どうしたのかと不安になって、首に巻き付けていた腕の力を緩めると、見たこともないほどに創介さんが顔を緩めて笑っていた。
「あ、あの――」
「何を言い出すのかと思ったら……。それは、俺を止めてるつもりなのか? それとも煽ってるのか?」
私を抱きかかえて身体を起こしても、まだ口元を押さえながら笑っている。
「煽るつもりなんてなくて……」
それだけは絶対に違う。
すぐに反論したけれど、何故だか創介さんは笑うのをやめてくれない。
「そんなに笑わないで」
目の前の創介さんがあまりに笑うから、この場から逃げ出したくなる。
「ごめん。雪野が、あまりに突拍子もないことを言うから、驚いて」
創介さんが私の腰を抱き寄せて、顔を上に向かせた。その先に、悪戯っぽく笑う視線とぶつかる。その目は、とても嫌な予感がする。