主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
そして、寝静まった夜更け。

「ん…」
雲英が目を覚ます。
腕の中でぐっすり眠っている紅葉を見て、優しく微笑んだ。

「可愛い…/////
愛おしいな、どこまでも……」

それにしても、寝苦しい。

クーラーは入っているが、紅葉に合わせて高めに設定している。
だから雲英からすると、寝苦しいのだ。

「でも、抱き締めて寝たいし…」

とりあえず水分補給をしようと思い、キッチンへ向かった。


冷蔵庫から、ミネラルウォーターが入ったペットボトルを取り出し、ゴクゴクと喉をならして500mlのボトルを飲み干す。

ふと、ベランダに目が行く。

理亜が、空を見ていた━━━━━━


「何してんの?」
腕を組んで、窓に身体を預けるように立っている雲英。

「え?あ、別に」

「“まだ”心配してるのか?」

「いえ」

「…………だったらいいが。
これ以上、紅葉様を傷つけるな」

「………はい?
傷ついてんの、わ、た、しです!」

「そうじゃない。
お前が傷つくと、紅葉様も傷つく。
その事を言っている」

「あ、そうですね」

「あの方は、いつも他人のことばかりだから」

「そうですね。
でもそれはきっと、紅葉が満たされるからですよ」

「そうか?
あの方は、例えご自分が満たされてなくても、お前の幸せを願うぞ」

「え?」

「あの方が何故、他人の幸せばかり願うか知ってるか?」

「いえ」

「空神財閥のご令嬢。
それは、かなりのプレッシャーだ。
その中で紅葉様は、必死に生きてきた。
嫉妬されることは日常茶飯事で。
だからよく言ってた。
“嫉妬は嫌い。
みんな怒ったり、苦しんだりした顔をするから。
だったら…ヤキモチ妬くことになっても、自慢話を聞かされて、笑ったり、楽しんだりした顔を見る方が好き”って」

「そうだったんだ…」

「紅葉様は、いつも真っ直ぐだ。
人から与えられる言動を、そのまま受け止める。
だから、真っ直ぐ想いを伝えることが出来る。
お前も紅葉様を見習って、素直に気持ちを伝えて話し合え!」

「そうですね」

「ちなみに俺と紅葉様はいつもそうやって、愛情を確かめ合ってる」

「え?二人が?」

「当たり前だろ?いくら夫婦だからって、俺達は他人なんだ。
お互いにどう思ってるかなんてわかるはずない。
だから、俺はいつも紅葉様に伝えるんだ!
紅葉様も、俺にちゃんと伝えてくれる。
大好きだと。
抱き合うのも、キスもそうだ。
伝え合わなきゃ、お互いの気持ちなんてわからない!
お前みたいな奴は“彼が好きって言ってくれない”“会ってくれない”“連絡を頻繁にくれない”
くれない、くれないって……受け身ばっかりだ。
待ってないで、自分から想いを伝えろ!
“好き”“会いたい”って!
自分から、頻繁に連絡しろ!
━━━━━だから、紅葉様もお前に言ってただろ?
伝えろって!」
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