主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
僕と花嫁様の警戒心

【警戒心がない、花嫁様】

「━━━━━紅葉ー!」

神が、帰り支度をしている紅葉に声をかけてきた。

「ん?何?」
「ちょっと、相談があってさ。
付き合ってくんない?」

「え?私?」

「そ!紅葉」

「わかった!
待ってね。甲斐に連絡するから」

「でも、もう会社前にいんだろ?」

「うん。いつも18時前には待ってるから」

「じゃあ、会って話せばいいだろ?」
「うん」

「ほら、行くぞ!」
紅葉の鞄を取り、手を掴んだ神。
そのまま、手を引いた。


18:23
車の時計を見つめている、雲英。

「遅い」
いつも仕事が終わると、10分程で出てくる紅葉。

何かあった?
体調崩して倒れてるとか?

「いや、今朝は元気だったしな」
それに万が一体調を崩すことがあれば、理亜から連絡がくるはず。

いや、待てよ。
今、理亜さんは出張中だ。

やっぱり、体調を崩し━━━━いや、誰かに襲われてるなんてことも………

「いや、あり得るぞ。
紅葉様は、とても素敵な方。
いくら社長令嬢だからって、社員達の魔が差すってことも━━━━」

助けに行かないと━━━━━━

雲英は車を降り、会社に向かおうとする。

すると向かいから神と紅葉が、手を繋いで出てきた。
「は?」

なん…で……手……

思わず、固まる雲英。
状況がのみ込めない。

「雲英さん」
「お前、紅葉様の手を離せ」

「はい?」
「その汚ない手を離せと言っている」

「あー、はいはい…」
パッと離した神。

そして雲英は、先程まで握られていた紅葉の手を掴み、そのまま引き寄せ抱き締めた。

「紅葉様…」
「甲斐、離して!
恥ずかしい/////」

「ダメですよ。
紅葉様、少しこのままでお待ちを」

雲英は紅葉を抱き締めたまま、神を見据えた。
(紅葉に聞かれないように、耳を塞ぐように)
「で?
俺の紅葉様と手を繋いでいた理由を離せ」

「はぁ…
いいじゃないすか!
手ぇ繋ぐくらい!」

「良くないから、聞いている」

「理亜のことで、紅葉に相談したいことがあるんですよ!
紅葉が、雲英さんに電話しようとしたから、どうせ待ってんだったら会って話そってことになったんです」

「は?」

「……ってことで、いいすか?
紅葉借りても」

「は?
いいわけがな━━━━━━」
「甲斐!!!」

紅葉が見上げて、鋭く見つめていた。
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