主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「え?なんでって、連れてきたの神くんでしょ?」

「あー、言い方おかしいか……
なんで、部屋にあがったの?」

「え?意味がわからない」

「はぁー、これだからガキは……」

「え?え?」

「紅葉。
“警戒心”って言葉、知ってる?」

「え?
もちろん」

「でも、お前。
俺に警戒心持ってないだろ!」

「え?だって、神くんだもん」

「はぁ…
雲英さんに、紅葉が俺ん家にいるって言ったら飛んで来るぞ!」

「え?どうして?」

「はぁ…」
神は、何度目かのため息をついた。
そして立ち上がり、紅葉の隣に座った。

「え?神…くん…?」

ニコッと微笑んだ、神。
そのまま、紅葉を押し倒した。

バサッと音がして、組み敷かれる紅葉。
一瞬、何が起こったかわからなかった。

「ちょっ……神くん!!!?」
「大丈夫!何もしねぇよ。
もう、理亜を悲しませることはしねぇ」

「え?」
「でもよ。
紅葉は本当に、俺が“兄貴”だと思ってんの?」

「え?」
「俺も“男”だぞ?」

「神くん…」

「わかるよな?
こんな無防備……“何か”あっても、文句言えねぇんだからな!」

「で、でも…神くんは、お友達だし、理亜の恋人だし」

「そんなの、関係ねぇの!!」

「………」

ゆっくり、紅葉から離れた神。
紅葉を優しく起こした。


「…………向田(むこうだ)
そして、ポツリと言った。

「え……」

「あいつ、危険だ。
気ぃつけろよ」

「え?向田さんが?
そんなわけな━━━━━━」

「それ!!!
それが!警戒心がないっつてんの!!!
━━━━━━いいか!!?
お前はいつだって、色んな奴に守られて生きてきたからわかんねぇだろうが……
言っておく!!
男ってのは“怖い生き物”だ!
その事を心の中に刻み込んで“警戒心”を持て!!」



それから、自宅マンションまで送ってもらった紅葉。
マンション前で降ろされ、神に見据えられた。

「今日は、ありがとな!
あと、怖がらせて悪かった。
俺だって、紅葉が“ダチとして”大事なんだ。
だから、傷つけたくねぇ。
いいか?俺が言ったことも忘れるなよ!」

「うん、わかった!」
大きく頷くと、神も頷いてバイクに跨がった。

軽く手を振って、去っていった。


玄関を開けると、雲英が駆けてきて抱き締められた。
「紅葉様、お帰りなさい!!」
「うん。ただいま!」

「あいつ……いや、志岐に何か酷いことされてませんか?」
「ううん。理亜へのプレゼントのアドバイスしたの」

「さようですか!
だったら、僕がついて行っても良かったですね。
何か、二人でないといけない用があったのかと……」

「え?あ、あぁ…」


最後に、神が言っていた。

“今回の本当の目的は、こっちだから!
お前に分からしたかったんだ。
男が怖いってこと”
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