主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
向田とは、最近入った短期バイトの男性。

まだ大学生で、紅葉達の一つ年下の大学四年生だ。
理亜が先輩社員と、出張で地方に行っている間だけのバイト。

とても明るくて爽やかな青年だが、明らかに紅葉に好意があるのが見て分かる。

いつもならこうゆう場合、理亜が牽制して守りに入る。

しかし理亜は、出張中。
その為、紅葉を守る人間がいない。
それもあって、神が気にかけていた。


「紅葉さーん!」

「はい」

「これ!」
紅葉の手を取った向田が手の平に、飴玉を乗せた。

「え?」

「好きですよね?」

「あ、ありがとうございます!」

「敬語!必要ないですって!」

「あ、はい…じゃない。うん、ありがとう!」

「今から昼ご飯食べますよね?今日も弁当ですか?」

「え?うん」

「そっか!
昼、弁当持って、近くの公園で食べません?
俺も、弁当用意してきたんで」

「え?あ……」
(ど、どうしよう……これって、断るべきなのかな?
でもお弁当食べるだけだし、お家に誘われたわけじゃないし)

仕事中、神に言われた“警戒心”を何度も自分に言い聞かせていた紅葉。
悶々と考える。

「紅葉さん?」

「うん、いいよ!」

紅葉は、向田と近くの公園に向かうのだった。



「━━━━ほんっと、美味しそうですね!」
「あ、うん!
とっても、お料理上手なの!」

「えーと…旦那さんが、専業主夫なんですよね?」
「うん!」
「へぇー!」

「んー、美味しい!」
「フフ…旨そうに食べるんですね!」

「うん!本当に、美味しいから!」
「フフ…」

「向田くんは、恋人いるの?」

「いや、いません!」

「そっか!」

「でも、好きな人はいますよ?」

「え?そうなんだ!
素敵ね!」

「素敵かな?」

「好きな人がいることは、素敵よ!」

「片想いでも?」

「えぇ!」

「相手の人、既婚者ですよ?」

「うん、それでも素敵!
人を想うってこと自体が、素敵。
人を想うと、優しい気持ちになれるから!」

「優しいか………」
呟く向田。

「ん?向田くん?」

「あ、すみません!
あ!そうだ!
今日、仕事終わったら食事しません?」

「え?あ……」
(さすがに、ダメだよね。
警戒心!警戒心!)

「ごめんね、お食事はちょっと……」
< 52 / 99 >

この作品をシェア

pagetop