主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
僕は花嫁様を過剰に世話したい

【過去】

「━━━━理亜ー、これは?」
「あ、それはこっち!」

「はぁーい!」

今日は、神と理亜の引っ越し日。
二人は今日から、同棲するのだ。

雲英と紅葉は、その手伝いに来ていた。

「━━━━━あ!紅葉様!!?
そのような重い物を持ってはいけません!!」

「え?そんな重くないよ?」

「僕がしますので、紅葉様は座っててください!」

「え?それじゃあ私、何をしに来たかわからないでしょ?」

「紅葉様は、ここにいてくれるだけで十分です!」

「「紅葉は、飾りかよ!?(笑)」」
雲英の言葉に、神と理亜が突っ込む。

「紅葉。それは羊さんに任して、荷解き手伝ってよ!」
「え?うん、わかった!」
理亜に声をかけられ、パタパタと駆け寄った。


しばらく、四人は黙々と作業をする。

「━━━━━あとは、この段ボールで終わ…り……!
紅葉ー、そこのカッター取ってくれー!」
「はぁーい!」
神に呼ばれ、丁度近くにあったカッターを取ろうとする。

すると、バッと取り上げられた。

「え━━━━?甲斐?」
「紅葉様、刃物なんて触ってはいけません!!」

「大丈夫だよ」
「ダメです!」

「もう!甲斐!!」
「え?」

「過保護すぎ!!」
「わかってます。
しかし紅葉様をお守りするのも、僕の役目です!」

「………」
「紅葉様、わかってください」

「私、益々何もできなくなるよ?」
「問題ありません」

「でも、夫婦は支え合って、助け合うものでしょ?
お父様も言ってたでしょ?」

「しかし“二人の夫婦の形を見つけろ”とも、おっしゃいましたよ。
僕達の夫婦の形は、紅葉様が僕の傍で、僕に守られ、僕に委ねることです」

「………」

「約束、しましたよね?」

「う、うん…」

「はい。もうこのお話はやめましょう!
それよりも、休憩しましょうね!」

雲英は紅葉に微笑み、神にカッターを渡しながら声をかけた。
「志岐、カッター。
あと、キッチン借りるぞ」
「あ、はい」

雲英は、持参した茶葉を取り出す。

「あ、紅茶ならありますよ?」
理亜が声をかけてきた。

「これはハーブも入っているから、何でも良いわけではない」
「へぇー!」

「今日の紅葉様、喉の調子が悪いからな。
あまり喉に負担のないものでないとならないだろ?」

理亜は、ただただ感心したように雲英を見ていた。
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