主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「え?」
「嫌われてるって?」
神と理亜が、首を傾げる。

「うーん…
二人になら、いいかな?
なぁ、雲英」

「志岐、理亜さん。
今から話すことは、何があっても……紅葉様の耳に入れるな。
それを、約束できるか?」

「「………はい…!」」
顔を見合わせて、神と理亜が頷いた。



「━━━━━俺には、紅葉様が知らない空白の一年がある」
雲英と亞嵐が話し始めた━━━━━━━


「16年前か……
紅葉様が小学校に入学して、二ヶ月程たった頃。
突然、紅葉様に“甲斐、執事クビ!もう、いらない”と言われた」

「は?」
「紅葉が、そんなことを……」

「あー、前に言ってたな。
ほら、みんなと同じじゃないことが嫌で、雲英さんに“いらない”って言ったって言ってたじゃん」
「あ、あー!」

「俺にとって、その言葉は“死ね”と言われているのと同じだった。
たった一度“いらない”と言われただけ。
ただ…それだけなのに、凄まじい喪失感が襲ってきた。
今考えれば“その程度のこと”だと、バカらしいが………
その時は、全てがどうでもよくなったんだ。
そんな時にある女に告白されて、セフレになった。
紅葉様には、セフレのことは知られてしまったんだが、一人の存在だけ。
本当は、数えきれない女と身体を重ねてきた」

「マジすか…」
「………」

「ちなみに、俺も!その時、色んな女達と遊びまくってた!」

「「………」」
神と理亜は、固まっている。

「それと同時に、大学にも通わず、亞嵐と当時の不良達やチームに所属していた暴走族の奴等と喧嘩三昧の毎日を過ごしてた」

「ちなみに、俺は中三の頃からだよ。
実は、高校もまともに行ってねぇ(笑)
まぁそれで、お嬢様のことがあって、俺が雲英を誘ったんだ。
あまりにも、ぼろぼろだったからな!
“パァーッと弾けたらどうだ”っつってさ!」

「でも……紅葉様には知られないように、紅葉様の前では紳士的に取り繕ってた。
いらないって言われたからって、同じ屋敷に住んでたからな。
亞嵐も紅葉様に会う時は、徹底的に裏の顔を消して紳士的に取り繕うようにしてた」

「でも、一年位しかもたなかった。
雲英、とにかく才能みたいに喧嘩が強くてさ。
あっという間に“甲斐 雲英は最強の男”って広まっちまってさ。
このままじゃ、お嬢様の耳にも入るんじゃねぇかと思って、雲英は俺達と関わらないようにしたんだ」
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