主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
そんな時だった━━━━━━

季節は秋だが、まだまだ暑い日が続いていたある金曜の夜。

夕食を済ませ、ソファに並んで座り映画を見ていた雲英と紅葉。

そこに、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。

「━━━━━ん?」
「誰かな?」

インターフォンを確認する。
「は?」

浪原が映っていた。

「はい」
「あ、空神さん!
すみません!今、ちょっと宜しいですか!?」

「はい」
(ほんと、鬱陶しい女だ)

「雲英、この方誰?」
「あぁ。この方が、浪原さんです」
「あ!この方!
マカロンのお礼言わないと!」
二人は、玄関に向かった。


「こんばんは!
先日は、マカロンありがとうございました!」
紅葉がドアを開け、丁寧に頭を下げた。

「え?あ…えーと……」

「あ!申し遅れました。
私、こちらの雲英の妻です!」

「あ、お、奥さん。
こちらこそ、隣に引っ越してきました、浪原です!」

「はい。聞いてます。
お隣どうし、よろしくお願いいたします!」
ぺこりと頭を下げる紅葉に、浪原も頭を下げた。


「で、浪原さん、何かご用ですか?」
そこに雲英が、声をかける。

「あ!すみません!
空神さん、電気に詳しいですか?」

「は?」

「トイレの電気が全くつかなくて……
私、そうゆうの苦手で……」

「お手洗いの電気!?
それは、大変ですね!
でしたら、ウチのお手洗いを使って━━━━━」

「あ、いえ!
そちらの旦那さんに見ていただけないかなと……」

「え……」
(雲英が修理するの?どうして?)

「あ…あの…そ、空神さん…?」

「………わかりました」
「え?雲英…?」

「紅葉様、すぐに終わらせます。
少し、お待ちを」

「え……」
(どうして?)

あんなに警戒心の強い雲英が、紅葉しかいらないと言っていた雲英が、女性の部屋に行こうとしている。

“大丈夫”と言ったのは自分だが、変な勘ぐりをしてしまう。

「大丈夫ですよ。
………………これで、最後にしますから……」
微笑み、紅葉に耳打ちする。

そして雲英は、浪原の家へ向かった。
トイレの電気を見ていると、浪原が声をかけてき
た。
「お忙しいのに、すみません」
「いえ」

「空神さんは、お仕事は何を?」

「してません」

「え?」

「妻が働いてるので。
僕は、専業主夫です」

「そうなんですね!
旦那さんが専業主夫だなんて珍しいですね」

「そうですか?
最近は、そんな方も増えてきたかと」
浪原の質問に、淡々と答える。


そして、電気が直り━━━━

「電球がキチンとはまっていなかっただけのようですよ。
これで、つくと思います」
そしてスイッチを押す。

パッと、電気がついた。

「あ、はい!ありがとうございました!
助かりました!」
浪原が、満面の笑みで頭を下げた。
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