主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
雲英が“紅葉様とのお揃いを増やしたい”と言ったため、二人は時計店にいた。

「どれがいいかなぁー?」
「そうですね」

ガラスケースを覗き込む、二人。

「これいいなぁー
あ!こっちも、素敵…/////」

「紅葉様、可愛い!」

「え?」

「キス、していいですか?」

「は?」

「いいですよね?
今日は“僕のお世話をしてくれる日”なんですから」
雲英の顔が近づいてくる。

「え?え?
それと、これとは話が………」
雲英を押し返す。

「紅葉様、キスして?」
「や…////こんなとこで、しない!」

「フフ…残念!(笑)」

そんなこんなで、時計を選び購入した二人。
その場で、お互いにつけ合う。

「フフ…素敵ね!」
「はい!それに、紅葉様とお揃い!!」
微笑み合っていると、店の従業員に「仲がよろしいですね!!」と微笑まれた。

「あ…/////はい////」
照れる紅葉。

「はい!」
微笑み、頷く雲英。

従業員は、クスクス笑っていた。


店を出て、またゆっくり歩く。
不意に、紅葉の視線が止まる。

「ん?紅葉様?
……………あ……」

紅葉の視線の先には、ブライダルショップ。
ガラス越しに、様々なドレスが並んでいた。


“ウエディングドレスは着たいです。
でも、結婚式はしたくないです”


紅葉の言葉が蘇った。

「紅葉様」

「ん?何?」

「本当は、したいんですよね?
………………結婚式」

「え?」

「ウエディングドレスが着たいだけではなく、式もしたいんですよね?」

「………ううん…そんなことないよ」

しかし紅葉の目は、そうは言っていない。

本当は━━━━
“ウエディングドレスを着て沢山の人達に祝福されたい”

そう言っているように見えるのだ。


「例えば、写真だけとか……」

「ううん」

「じゃあ、お父様と理亜さん達だけとか」

「ううん」

「でも、紅葉様………!」

「もう…この話はしたくない!」

「は、はい…」


切なく揺れる紅葉の瞳に、雲英は何も言えなくなるのだった。

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