イノセント・ラブ・アフェア
「よかったら、お茶でも飲んでいってください」

私が言うと、彼は笑った。

目じりのかすかなしわが、甘くて可愛い。

「お茶なんかいいよ。それより、休んだほうがいいよ」

ちょっと。私が思い切って誘ってるのに、それはないんじゃないの?

「じゃあ」

そう言って彼はアパートの階段に向かって体を向けた。

「待って」

気がつくと私は、彼の袖をくっと引っ張っていた。





やだ。

あたし、なにやってるんだろう。

いいの?こんなことして。

「だめだ。私、まだ酔っ払ってるみたい」

私は無意識に声を出した。

「じゃ、ちょっと寄ってから帰る」

彼はそう言って、部屋に上がりこんだ。
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