仕事に悪影響なので、恋愛しません! ~極上CEOとお見合いのち疑似恋愛~
知りたい
 これまでずっと、私は不器用だって思ってきた。
 心の底から思う。それは間違いではなかったと。
 出社して、まだたった一時間……。全っ然、集中しきれない!
 私は自分の席に着いて仕事を始めていたものの、明らかに昨日までとは違う心境に戸惑っていた。
 今、そうなったわけじゃない。今朝会社へ来るまでの間、ずっとだ。
 もちろん、頭を占めるのは昨夜のこと。
 油断すればすぐさま菱科さんの顔が浮かぶ。私は懸命に払拭しようと、いつもなら自然とスイッチが入るはずの仕事モードを、意識的に切り替えを試みる。
 そうしていざノートパソコンと向き合い、キーボードに手を置いた途端、自分の綺麗になった指先が視界に入ってきて悶絶する。その繰り返しも、もう何度目か。
 あああ……もう助けて。就業時間中だっていうのに、心臓まで正常な速さじゃなくなってきた。
 周囲に気づかれないようこっそり嘆いていると、バッグの中のスマートフォンが振動した。短いバイブレーションはメッセージ着信だ。
 手に取ると、画面には人気インフルエンサーの投稿更新の通知が表示されていた。あとでチェックしよう。
 スマートフォンをバッグに戻し、再びノートパソコンに向き合うと、やっぱり爪に目がいってしまう。私はぱっと自分の手を隠すように胸に押し当てた。
「はー」
 瞼を伏せ、小さく息を吐く。
 どうしても、このプレゼントをもらったところから、キス……までの流れが頭から離れない。このままじゃ、本当に仕事に戻れないよ。
 軽く首を横に振り、気持ちを切り替える。
 心を落ちつかせ、再度ネイルを施した自分の爪を眺めた。
 久々に手入れした爪を見ると、気分がいい。些細ではあるけど、こうやって自分の機嫌をよくすることは、巡り巡っていい仕事に繋がるはず。
 販売員として売り場に立っていたときは、身だしなみとしてというほかにそう思っていたのを思い出す。
 憧れだった部署での仕事に慣れるのに必死で、自分のケアは二の次になっていたと気づかされた。適度な息
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