仕事に悪影響なので、恋愛しません! ~極上CEOとお見合いのち疑似恋愛~
「なにごとも予定調和だった僕は、なにに対してもそんな感じだったんです。幸さんだけが、出会ってから今もずっと、僕を翻弄する。嫉妬深くなったり、不安になったり、焦れたりする。自分の感情の先が読めない――幸さんへの気持ちだけが、どういうことか制御がきかない」
菱科さんはゆっくり私を見て、困った顔でわずかに笑った。途端に私の心臓がドクドクと大きな音を立て始める。
「僕にとってかけがえのない女性です。幸さん以外は考えられない」
菱科さんがはっきりと宣言すると、姉は苦笑した。
「ふたりして、同じこと言っちゃって……」
『同じこと』――。菱科さんも、私以外は考えられないと、そう思ってくれている。
日頃の彼から気持ちは十分伝わってきてはいたけれど、改めて言葉に出されると実感する。
「約束してください。蒸し返すようで悪いのですが、幸が二度と同じような目に遭わないよう、対策をしてください。必ず幸を守って」
姉の頼みに、菱科さんは背筋を伸ばしてtしっかりと答えくれる。
「はい。もちろんです」
すると、今度は姉は菱科さんに深々と頭を下げた。。
「菱科さん。初対面にもかかわらず、失礼な言動ばかり、大変申し訳ありませんでした。どうか妹を、これからもお願いいたします」
私はそんな姉の姿を見て、胸の奥に熱いものが込み上げた。
翌日は平日。
私は通常通り出社し、仕事に就いていた。
昨夜は菱科さんが気を使ってくれたのか食事を終えたら解散となり、久しぶりに姉のマンションに泊まらせてもらった。
照明を消したあとの真っ暗な部屋で、布団に入ったあとも、しばらくふたりで話が盛り上がった。
そんな楽しい時間をときおり思い出しながら、仕事を進める。
お昼休憩になった際に、菱科さんからメッセージが来た。お弁当を食べる手を休め、メッセージを開く。
メッセージの用件は、今夜美有さんと約束を取りつけることができたという報告だった。
なんとなく菱科さんのことだから、展開は早いのではないかと予想していた。問題を先送りにするような人じゃないと思ったから。
続けて、待ち合わせの時間や場所について送られてきた。私はそれを確認し、【わかりました】とだけ返信した。
仕事に区切りをつけてオフィスを出たのは、午後六時半を過ぎたくらい。
菱科さんとの待ち合わせは、ひとつ隣の駅付近に七時。なんでも、菱科さんは外出先から直接待ち合わせに来るらしい。
待ち合わせ場所に到着し、キョロキョロとするも菱科さんはまだ見当たらない。
なにげなくぼんやり行き交う人を眺める。
帰宅する人や、これから食事に行く人たちで賑わっている。そういえば、今日は金曜日だった。
私は視線を自分の足元に移し、「ふう」と息を吐く。
このあと美有さんと会うと考えたら、やっぱり緊張はしてしまう。
自分のつま先をジッと見つめていたら、突然肩にポンと手を置かれる。
「わっ」
私は驚いて飛びのき、勢いよく顔を上げた。
「菱科さん! び、びっくりした」
横に立っていたのは菱科さん。
考えごとに没入していたせいで、気配に気づけなかった。いつの間にか近くに来ていたらしい。
「驚かせたみたいでごめん。名前呼んだんだけど、気づいてなかったから」
苦笑しながら言われ、脱力する。
「それは私こそごめんなさい。えっと、お疲れ様です」
「いや……。緊張してる? やっぱり苦痛なら、俺だけ行くからどこかで待っていても……」
「いえ。大丈夫です」
私はきっぱりと返し、菱科さんの手をきゅっと握る。
「菱科さんと一緒だから」
すると、彼は目をぱちくりとさせたあと、微笑んだ。
「ありがとう。それじゃ、移動しようか」
移動中は冷静になるよう心がけて、こっそり呼吸を整える。
十分くらい歩いてたどり着いたのは、路地裏にある和洋の要素が混ざったような印象のカフェ。
ドアは引き戸っぽいのに外灯のランプは外国風。玄関先に並べてあるプランターも、洋風っぽいデザインのものと和のデザインのものがある上、花もいろいろ。菊やあやめに似た花もあれば、マーガレットや、花びらがひらひらして可愛らしいものもある。
冬でも咲く花がこんなにあるんだと驚き、思わず足が止まっていた。
「ここで待ち合わせを?」
尋ねたわけは、少々意外だったから。
菱科さんと美有さんが会う場所と想像したとき、私のイメージに過ぎないのだけれど、高級レストランとか料亭とかそういう場所を想像していた。ふたりの雰囲気から、そういった場所が似合うし、自然だと思って。
「そう。幸は気に入ってくれると思う」
柔らかく目を細めて言われると、単なるデートだと錯覚しそうになる。
でも菱科さんがそう言うほどだから、きっと素敵なお店なのだろう。そう思うと、気持ちに余裕なんかないはずが、わくわくしてきた。
菱科さんはゆっくり私を見て、困った顔でわずかに笑った。途端に私の心臓がドクドクと大きな音を立て始める。
「僕にとってかけがえのない女性です。幸さん以外は考えられない」
菱科さんがはっきりと宣言すると、姉は苦笑した。
「ふたりして、同じこと言っちゃって……」
『同じこと』――。菱科さんも、私以外は考えられないと、そう思ってくれている。
日頃の彼から気持ちは十分伝わってきてはいたけれど、改めて言葉に出されると実感する。
「約束してください。蒸し返すようで悪いのですが、幸が二度と同じような目に遭わないよう、対策をしてください。必ず幸を守って」
姉の頼みに、菱科さんは背筋を伸ばしてtしっかりと答えくれる。
「はい。もちろんです」
すると、今度は姉は菱科さんに深々と頭を下げた。。
「菱科さん。初対面にもかかわらず、失礼な言動ばかり、大変申し訳ありませんでした。どうか妹を、これからもお願いいたします」
私はそんな姉の姿を見て、胸の奥に熱いものが込み上げた。
翌日は平日。
私は通常通り出社し、仕事に就いていた。
昨夜は菱科さんが気を使ってくれたのか食事を終えたら解散となり、久しぶりに姉のマンションに泊まらせてもらった。
照明を消したあとの真っ暗な部屋で、布団に入ったあとも、しばらくふたりで話が盛り上がった。
そんな楽しい時間をときおり思い出しながら、仕事を進める。
お昼休憩になった際に、菱科さんからメッセージが来た。お弁当を食べる手を休め、メッセージを開く。
メッセージの用件は、今夜美有さんと約束を取りつけることができたという報告だった。
なんとなく菱科さんのことだから、展開は早いのではないかと予想していた。問題を先送りにするような人じゃないと思ったから。
続けて、待ち合わせの時間や場所について送られてきた。私はそれを確認し、【わかりました】とだけ返信した。
仕事に区切りをつけてオフィスを出たのは、午後六時半を過ぎたくらい。
菱科さんとの待ち合わせは、ひとつ隣の駅付近に七時。なんでも、菱科さんは外出先から直接待ち合わせに来るらしい。
待ち合わせ場所に到着し、キョロキョロとするも菱科さんはまだ見当たらない。
なにげなくぼんやり行き交う人を眺める。
帰宅する人や、これから食事に行く人たちで賑わっている。そういえば、今日は金曜日だった。
私は視線を自分の足元に移し、「ふう」と息を吐く。
このあと美有さんと会うと考えたら、やっぱり緊張はしてしまう。
自分のつま先をジッと見つめていたら、突然肩にポンと手を置かれる。
「わっ」
私は驚いて飛びのき、勢いよく顔を上げた。
「菱科さん! び、びっくりした」
横に立っていたのは菱科さん。
考えごとに没入していたせいで、気配に気づけなかった。いつの間にか近くに来ていたらしい。
「驚かせたみたいでごめん。名前呼んだんだけど、気づいてなかったから」
苦笑しながら言われ、脱力する。
「それは私こそごめんなさい。えっと、お疲れ様です」
「いや……。緊張してる? やっぱり苦痛なら、俺だけ行くからどこかで待っていても……」
「いえ。大丈夫です」
私はきっぱりと返し、菱科さんの手をきゅっと握る。
「菱科さんと一緒だから」
すると、彼は目をぱちくりとさせたあと、微笑んだ。
「ありがとう。それじゃ、移動しようか」
移動中は冷静になるよう心がけて、こっそり呼吸を整える。
十分くらい歩いてたどり着いたのは、路地裏にある和洋の要素が混ざったような印象のカフェ。
ドアは引き戸っぽいのに外灯のランプは外国風。玄関先に並べてあるプランターも、洋風っぽいデザインのものと和のデザインのものがある上、花もいろいろ。菊やあやめに似た花もあれば、マーガレットや、花びらがひらひらして可愛らしいものもある。
冬でも咲く花がこんなにあるんだと驚き、思わず足が止まっていた。
「ここで待ち合わせを?」
尋ねたわけは、少々意外だったから。
菱科さんと美有さんが会う場所と想像したとき、私のイメージに過ぎないのだけれど、高級レストランとか料亭とかそういう場所を想像していた。ふたりの雰囲気から、そういった場所が似合うし、自然だと思って。
「そう。幸は気に入ってくれると思う」
柔らかく目を細めて言われると、単なるデートだと錯覚しそうになる。
でも菱科さんがそう言うほどだから、きっと素敵なお店なのだろう。そう思うと、気持ちに余裕なんかないはずが、わくわくしてきた。