殿下は殿下の心のままになさってください。
(なんかこの場面、見覚えがある……)
それは、ふわふわしたピンクの髪の毛、濃い青色の瞳を持つ令嬢が、わたしの婚約者――――ヴァージル殿下と微笑み合う姿を見たときのことだった。
どこからともなく舞い上がる花吹雪。周りには沢山の人がいるのに、まるでふたりきりみたいな空気感を醸し出し、熱く互いを見つめ合っていた。
(分かった。――――あれだ。乙女ゲームだ)
自覚した瞬間、記憶が走馬灯のように一気に蘇ってくる。
状況を一度整理しよう。
わたしはマチルダ。公爵令嬢であり、王太子ヴァージルの婚約者だ。今日から彼とともにこの王立学園に通うことになっている。
父は宰相。それから、優秀な兄が一人いる。子供の頃からの記憶だってバッチリある。
だけどこの世界は、前世のわたしにとっては非現実――――人の手によって作り上げられたゲームの中の世界だ。
(っていっても、内容はほとんど覚えてないんだけどね)
大きなため息を吐きつつ、わたしはヒロインと己の婚約者とをちらりと見遣る。
わたしは元々恋愛小説や乙女ゲームが好きなタイプじゃなかった。寧ろ恋愛とかそういうのは苦手で、遠ざけていたといっても過言ではない。だけど――――
それは、ふわふわしたピンクの髪の毛、濃い青色の瞳を持つ令嬢が、わたしの婚約者――――ヴァージル殿下と微笑み合う姿を見たときのことだった。
どこからともなく舞い上がる花吹雪。周りには沢山の人がいるのに、まるでふたりきりみたいな空気感を醸し出し、熱く互いを見つめ合っていた。
(分かった。――――あれだ。乙女ゲームだ)
自覚した瞬間、記憶が走馬灯のように一気に蘇ってくる。
状況を一度整理しよう。
わたしはマチルダ。公爵令嬢であり、王太子ヴァージルの婚約者だ。今日から彼とともにこの王立学園に通うことになっている。
父は宰相。それから、優秀な兄が一人いる。子供の頃からの記憶だってバッチリある。
だけどこの世界は、前世のわたしにとっては非現実――――人の手によって作り上げられたゲームの中の世界だ。
(っていっても、内容はほとんど覚えてないんだけどね)
大きなため息を吐きつつ、わたしはヒロインと己の婚約者とをちらりと見遣る。
わたしは元々恋愛小説や乙女ゲームが好きなタイプじゃなかった。寧ろ恋愛とかそういうのは苦手で、遠ざけていたといっても過言ではない。だけど――――
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