殿下は殿下の心のままになさってください。
『ダメだよ真知。恋愛が苦手ってだけならまだしも、性格キツイし隙だってないし、そんなんじゃ一生彼氏できないって。男ってもっとふわふわした子が好きなんだからさ』


 友人の一人にそんなことを言われて、参考にするようにと渡されたのがこの乙女ゲームだった。

 今思うとめちゃくちゃ大きなお世話だけど。それでも一応プレイはした。


(苦手なんだよなぁ、あのヒロイン)


 明るくてふわふわしていて、隙だらけで。恋愛のことしか頭にないって感じ。
 そりゃ、ゲームだからキャラクターやそれを取り巻く一面しか切り取られてないんだろうけど、それにしたってわたしは好きになれなかった。


(そもそも、婚約者がいる男を好きになって、奪い取っておいて、被害者ぶるってどうなのよ?)


 この先になにが起こるかを思い出すだけで、頭がめちゃくちゃ痛くなる。


 ヒロインのカトレアは王太子ヴァージルと恋に落ち、婚約者(つまりわたし)がいることに思い悩む。

 わたしはわたしで、ヒロインに苦言を呈しまくり、王太子とのデートなんかを妨害し、ゲームにおける悪役として君臨する。

 最終的には、王太子ヴァージルはそんなわたしに愛想を尽かし、今から三年後に婚約を破棄し、カトレアと婚約を結び直してハッピーエンドっていう流れだった――――と思う。


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