貴方と同じ愛を返したい
(どうしたんだろう)

 もちろん、渡辺に腹を立てているのは伝わってくる。でも、彼女がこんなに感情を表に出すとは思っていなかったため、相当驚いた。

 その間に、ぷっくりした綺麗な唇が動いた。

「あの、少しいいですか?」

「「、、、」」 

「さっきから黙って聞いてたら、ひどい言い草ですね。『お前のこと嫌いだから』女子のレベルをあなたが決めるんですか。女子のレベルをお前ごときが決めるな。いってること分かります?っていうか、さっき圭斗君が来るまで私に惚れたとか言ってましたよね?その言葉は嘘だったのですね。別に悲しくはありませんが、正直『は?』とは思いますよね。だって、自分の都合で態度を変えられるわけですから。それを嬉しいと思ってくれる女の子はまあ、滅多にいないと思いますよ。あと、圭斗君のことを悪く言うのはやめてください」

 すご。朝も思ったが、ある一定値を超えるとはっきりと物事を言えるらしい。かっこいいな。

 渡辺は、どう思ったのだろうか。ちらっと様子をうかがうと、かなり狼狽した様子だった。

 そして、

「ごめんなさい」

 こう言った。

 本当に驚いた。こいつは、こんなにも素直なやつだったか?もちろん、美優さんが言ったという事実も大きいと思う。でも、先生に言われても基本的に態度が改まらないどころか、謝罪すらしない渡辺が。

 俺が驚いている間にも、美優さんが何か言おうとしたから、止めた。

「もういいよ。美優さん自身と俺のために言ってくれてありがとう」

「え?なんで私が私自身のために言ったことに圭斗君がお礼を言うの?」

「だって、俺ら付き合ってるじゃん。付き合ってるってことは、お互いがお互いのものでもあるんだよ」

 美優さんは驚いた顔をしたあと、

「ありがとう」

 といった。それが嬉しくて、思わず頬が緩んでしまった。
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