貴方と同じ愛を返したい
いつもの俺は、休み時間のチャイムが鳴るたびに、迷惑がられるかもしれないと思いつつも、できる限り彼女の教室に行った。

でも、今日だけは、行かなかった。

俺が行くことで、彼女のクラスの人との関わる時間を奪ってしまうのが嫌だったから。

一人でこの昼休みをどう乗り切るか考える。本を読んだりスマホをいじるのがべたかもしれないが、本は好きではないし、スマホは校則で教室でいじれない。

どうしようかと迷っていた時、綺麗な声が俺の耳に響いてきた。

「すみません。圭斗君いますか」

美優さんの声だ。どうしよう。うれしい。

気が付いた時には、軽快な足取りで彼女の立っているドアに近づいていった。

「美優さん!どうしたの?」
「圭斗君に話したいことがあって」

なんとなく嫌な予感。でも、別れ話じゃない気がする。この違和感は何だろう。

「ちょっと待ってて、次の時間の準備だけ先に持ってくる」
「はーい」

彼女が返事をしてくれたことをきちんと聞いてから、俺は移動教室の準備をした。

ちらっと盗み見た彼女は、窓の外を寂しそうな目で見ていて、自分のやるべき準備が少し遅れてしまった。

「なんかすごい疲れてるけど、この短時間で何が起きたの」

おかしそうに彼女が問う。

「筆箱が行方不明になって教室中走り回ってた」
「ふふふ、そんな焦らないでゆっくり探さないと見落とすよ」

やっぱり。彼女の笑いはとても上品で、美麗だ。
そんな彼女に見られていると、自分の間抜けさが恥ずかしくなる。

「はい、その通りで自分の手に持ってました」
「、、、そっか」

ワンテンポ遅く返事をした美優さんは、何を考えていたのだろう。

そんなことをふと思いながら、空いている教室を探した。
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