貴方と同じ愛を返したい

圭斗の過去

　圭斗がまだ小学生だった時、彼の両親は仲が良くて、毎週末彼を実家に預けて、デートに行ったり、二人でゆっくり過ごしたりする時間を確保していた。

　そうして二人の愛を確かめていたのだと思う。

　でも、圭斗が中学1年生だった晴れた夏の日、彼の両親は車で山を越えて出掛ける際に、目の前に飛び出してきた子供を避けるため急な方向転換をした末、崖から落ちて亡くなった。

　当時、父方の祖父母も、母方の祖父母も、受け入れることなんてできるわけなかった。そして、圭斗も受け入れられるわけもなかった。

　親族一同暗い雰囲気が一か月ほど続いたある日、圭斗のみ、立ち上がった。

　ずっと暗い表情をしていても無駄だと彼の中で考えたのだ。

　でも、もちろん、すぐに立ち上がれるわけがない。心に決めても、やはり両親に会いたいという気持ちが消えるはずなんてなかった。

　だから、家に帰る前に高架橋の下にある、だれも通らない公園のベンチで人知れず涙を流した。

　塾の帰り、祖父母には『ちょっと友達と一緒に自習してくる』と連絡をして、友達にアリバイづくりに協力してもらい、そこに行って、大声で泣き叫んだ日も沢山あった。
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