天使くん、その羽は使えません (短)
カチャ、シュー……


不思議な装置の中で呼吸を繰り返す私を、天使くんは変わらず無表情で見ていた。

私は何度か呼吸を繰り返し、声を出せそうになったタイミングを見計らって――聞かれてもいないのに「これはね」と説明を始める。


「酸素を吸ってるんだよ」

「酸素?なんで?」

「天使くん、私の死ぬ時期が分かるなら、死ぬ原因も分かるんじゃないの?

私ね、生まれつき肺が弱くて、激しい運動が出来ないの。すぐ呼吸が乱れちゃう。乱れた時は、こうやって酸素マスクをつけて酸素を吸うんだよ。……弱いよね、私」

「……」


ふっと笑う私と、無表情な天使くん。先に口を開いたのは、天使くん。


「じゃあ余命を言われた時に“ 知ってるよ”って言ったのは、」

「こんな体で、長くは生きられないんじゃないかって、そう思ってたから……。だから、天使くんから余命を告げられても、驚かなかった。”やっぱりね”って、そう思う方が強かったかな」

「……」

「天使くん?」
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