天使くん、その羽は使えません (短)
「……ふぅん」


天使くんは、私に同情するでもなく。慰めるでもなく。励ますでも、無理に明るく振る舞うでもなく。

ただ、酸素を吸う私を、無表情で見ていた。


「……天使くん、今なにを思ってるの?」


彼が今なにを思ってるのか。何も思ってないなら、それはそれで良い。天使くんの心が、今どこにあるのか。知りたくなった。

だけど、少しワクワクした私の気持ちは、天使くんの「別に」の言葉で切り捨てられる。いい意味で、バッサリと。


「そんな体なのに、こんなにバドミントンに必死になって――人間ってバカだなぁって。そう思っただけだよ」

「……ふふ」


遠い目をした天使くんの顔。その輪郭を、夕日の光が優しくなぞる。その光景が綺麗で、美しくて……それ以上は、もう何も考えられなかった。


「あー疲れた!天使くんスパルタすぎー!」

「俺は自主練に付き合っただけだよ」

「うん!すごく助かったよ、ありがとう!」

「……」
< 19 / 89 >

この作品をシェア

pagetop