天使くん、その羽は使えません (短)
そして――約束の15時。
公園に行くと、すでに天翔くんがラケットバッグを持ってベンチに座っていた。
公園には、誰もいない。だけど天翔くんは、ある一定の物を見て、全く動くことがなかった。
(あ、あそこって、確か……)
私と天翔くんが初めて会った日。天翔くんは、死んだ猫をこの公園に埋めていた。
天翔くんが今みているのは、猫を埋めた場所。荒らされた様子はなく、あの日埋めたままの綺麗な状態だった。
「……」
(天翔くん……)
天翔くんが、今すごく悲しそうな目をしてるのは……天使だから?死んだ猫の事を思って、悲しんでるのかな。
サアァァァ
その時、一瞬の風が吹いた。柔らかい風。暖かくもあり、少し冷たくもあるような……心地いい風。
その風が、天翔くんの髪を揺らす。金色の髪は、太陽の光を受けてキラキラ光っている。
あぁ、天翔くんって、本当に――