天使くん、その羽は使えません (短)
「買い被りすぎ。もしくは夢みすぎ」


吐息と一緒に漏れた声は、なんだか小さかった。自分に自信が無いから、小さな声なのかな?

もったいない!天翔くんは、胸を張って堂々と「俺はすごいんだぞ」って言えるよ。それくらいスゴイんだからね!


「夢じゃなくて、ちゃんと現実を見てるよ。本当に天翔くんは――欠点がなさすぎて、完璧な天使だなって。そう思ったの」

「っ!」


その時、初めて。

天翔くんの顔が、ぐにゃりと歪んだ。

かと思えば俯いて、私と目を合わせない。まるで自分を隠してるみたいな、そんな雰囲気。


「天翔くん?」

「……」

「どうしたの?気分が悪いの?」


心配になって、急いで天翔くんの傍に寄る。すると天翔くんはサッと。また私から顔を逸らした。

な、なによ。そんな事されると、ますます心配になるじゃん!

天翔くんの肩に手を置き、私の方を見るようにグイと力を込める。すると……


「気分、悪いよ」


怒った顔の天翔くんと、目が合った。
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