天使くん、その羽は使えません (短)
「……身が朽ち果て、土に還る間
。死んだモノの魂は、下界にいる事が出来る。

あのネコは……車に轢かれて死んでいた。首輪がついているという事は、飼い主がいたという事。

突然に命を落としたんだ。ネコの気持ちに寄り添って、最期に飼い主と別れの挨拶をさせてやりたかったんだ。

そう思うのは、間違った事?」

「……」
「天翔くん……」


そうなんだ。そういう理由があるんだね。天翔くん、優しいな。ネコの事を考えてあげてるんだね。

だけど、そんな天翔くんの主張を鼻で笑ったのが――お兄さん。「愚弟が」と呟いて、スッと目を閉じた。


「な、何をするの……?」

「俺の後ろに下がって。兄さんは、きっと――」


天翔くんが、そこまで言った時だった。お兄さんの体が、赤く光はじめる。

鋭く、尖るような発色の良い赤色。まるで、お兄さんの「怒り」を表しているかのような色。


「来い――」


お兄さんがそう言うと、天翔くんがネコを埋めた場所の土が、モコモコと動き始めた。え、ま……まさか。お兄さんがやろうとしてる事って……!

すると嫌な予感は的中した。
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