天使くん、その羽は使えません (短)
土の中から、ネコの亡骸(なきがら)が出て来たのだ。お兄さんが、掘り返した事によって。


(許せない……!)


私が怒りを覚え始めた時。この場に、もっと驚く事が起きる。


「愚弟よ、よく見ておけ。なぜ自分が正天使になれないのか。なぜ未熟なままなのか――

それは己の心の弱さに他ならない。その事をよく知っておけ。胸に刻み、片時も忘れるな。

人間に近い心を持つお前に、天使の道は開きはしない」


ネコの亡骸を自分の前に呼び寄せるお兄さん。その瞬間、真っ白の大きな鳥が舞い降り、巨大な翼でネコを包みこむ。

そして翼で完全にネコが見えなくなった時。鳥もすぅっと、姿を消した。鳥の「ケーン」という甲高い鳴き声だけが、あたり一面に木霊している。

ネコが眠っていた土は、空っぽ。お兄さんが呼び寄せた鳥により、いなくなってしまった。


ギュッ……


「それ、やめて。兄さんには、何をやっても勝てないよ」
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