天使くん、その羽は使えません (短)
「……あ」
気づけば、私はラケットを手に持ち、力強く握っていた。私、いつの間に……。
これでお兄さんを叩こうとしてたのかな?命よりも大事なラケットって、いつもそう思ってるのに。
(いけない……。私、完璧に頭に血が上っている)
それを見かねた天翔くんが、私に落ち着くように注意をした後。抑揚のない声で、ざっくりと説明を始めた。
「俺、さっきはあぁ言ったけど……。でも、俺が天使の仕事をしなかったのは本当だから。あの時も、このネコは土に埋めるべきじゃない。すぐに魂を天界に送るべきって……そう思っていた。それなのに、そうしなかった……出来なかったんだ」
「あ……」
そうか、だから――初めて会った時、天翔くんは悲しそうに見えたんだ。
土を掘る淡々とした作業の中で、彼のもの悲しそうな雰囲気が引っかかっていた。だけど、今やっと、謎が解けた。
天使の仕事をやるべきという思いと、ネコの気持ちに寄り添いたいという思い――この二つの思いの間で、天翔くんは揺れていたんだ。
気づけば、私はラケットを手に持ち、力強く握っていた。私、いつの間に……。
これでお兄さんを叩こうとしてたのかな?命よりも大事なラケットって、いつもそう思ってるのに。
(いけない……。私、完璧に頭に血が上っている)
それを見かねた天翔くんが、私に落ち着くように注意をした後。抑揚のない声で、ざっくりと説明を始めた。
「俺、さっきはあぁ言ったけど……。でも、俺が天使の仕事をしなかったのは本当だから。あの時も、このネコは土に埋めるべきじゃない。すぐに魂を天界に送るべきって……そう思っていた。それなのに、そうしなかった……出来なかったんだ」
「あ……」
そうか、だから――初めて会った時、天翔くんは悲しそうに見えたんだ。
土を掘る淡々とした作業の中で、彼のもの悲しそうな雰囲気が引っかかっていた。だけど、今やっと、謎が解けた。
天使の仕事をやるべきという思いと、ネコの気持ちに寄り添いたいという思い――この二つの思いの間で、天翔くんは揺れていたんだ。