天使くん、その羽は使えません (短)
「も、戻してあげないの?どうしても?」

「一度下界に降りたものは、魂を回収するまでは戻れない。それが天界のルールだ」

「勝手に天界を追い出しといて、何を……」


だけどお兄さんは、聞く耳を持たないらしい。羽を動かして、少しずつ浮上した。


「起きたら、弟へ伝えておけ。お前はもう二度と天界に戻って来るな、と」

「そ、そんなこと、言えるわけないじゃん!」

「ふん、使えん人間だ」

「んな!?」


するとお兄さんは、光の速さで飛んでいった。ロケットよりも早かった。突風のせいで目が痛い。


「にしても……」


擦り傷がたくさん入った、天翔くんの顔を見る。
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