天使くん、その羽は使えません (短)
「ときどき暗い顔をしていたのは、そういう事があったんだね」


お兄さんは「正天使」。
弟である自分は「準天使」。
兄弟で格差があり、しかもお兄さんに嫌われている天翔くん。まさか天使にもレベルの違いがあるなんて、知らなかったなぁ。


「天翔くん……」


金髪の前髪をサラサラと撫でる。その髪の柔らかさと、日差しの暖かさが交わって……。私は思わず、笑みが零れた。


「助けてくれてありがとう。あと、」


――晴衣!!


「名前を呼んでくれて、嬉しかった」


すると、今まで気絶していた天翔くん。

震えるまつ毛を起こして、少しだけ目を開けた。そして小さな声で、

「ほんと、人間って……」と。

いつものお決まり文句を口にした。

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