天使くん、その羽は使えません (短)
「どうしたの?天翔くん」

「その日付……間違いないの?」

「うん。合ってるよ!大事な試合の日を、私が間違えるわけないじゃん~!」


ブイ!とピースを作ると、天翔くんは私の手から紙を奪った。そして目を皿のようにして、書かれている文字を見ている。

そして――やっぱり私のいう事は間違いじゃないと分かったらしい。無言で紙が返された。


「どうしたの?なんか変だよ?」

「……」

「天翔くん?」


天翔くんは、口をギュッと閉じて開かない。薄い唇が、問答無用で潰され横に伸びている。


「ねぇ晴衣」


すると、心配する私の顔を、天翔くんは穴が空くほど見つめた。真剣な表情をして、何を言うかと思えば――


「棄権(きけん)して」

「……え?」

「この試合、出ちゃダメ」

「で、出ちゃダメって……」


またまた~なに冗談言っちゃってんの!と笑う私。一方で、真剣な顔の天翔くん。その顔を見たら、どうしてか「冗談」とは思えなくて。胸のざわつきが、大きくなる。

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