天使くん、その羽は使えません (短)
――棄権(きけん)して
――この試合、出ちゃダメ
本当に、私の実力不足を心配しただけ?
それとも――…
「ねぇ天翔くん、」
「そろそろ晩御飯かな。家に入ろう、晴衣」
「え、あ……うん」
いつも通りの天翔くん。いつも通りの無表情。何かを隠してる感じには見えない。
(やっぱり気のせい、かな)
きっと天翔くんは、私の弱さを本気で心配して「棄権した方がいい」って言ったんだって。そう思った。
だけど、その時の天翔くんの発言。
ピクリとも顔色を変えなかった無表情。
それらの裏に、とんでもない事実があったという事を――試合当日。私は知ることになる。